STEP01 股関節

正面

股関節正面撮影は大腿骨頸,大転子,小転子も同時に投影するため,股関節正面像の体位だけでなく,大腿骨近位端の正面像としての位置づけも必要である。股関節正面像における骨頭の中心は,上前腸骨棘と恥骨結合上縁を結んだ線上の中点を外下方へ垂直に5cmの位置である。片側撮影の場合はこの点がX線中心線の入射点となる。両側撮影では両大腿骨頭中心を結んだ線と正中線との交点に入射する(この部は恥骨結合上縁から上方へ2~3cmにあたる)。いずれの場合も,大腿骨をやや内旋して大腿骨頸の長軸をより水平にし,同時に大転子と小転子がそれぞれ明瞭に観察できる必要がある。

⚫️体位:仰臥位。骨盤部をカセッテ面と水平にし,下肢は伸展して,軽度の内旋位にする。
⚫️中心線:大転子より3cm頭側が大腿骨頭の位置となる。両大腿骨頭を結んだ線と正中線の交点に垂直に入射する。あるいは,恥骨結合上縁から正中線上で上方へ2~3cmの点に垂直に入射する。


軸位

股関節の側面像,および大腿骨頸の側面像は大腿骨頸軸を垂直に,寛骨臼窩および骨頭を水平方向に投影する軸位像である。大腿骨頸の長軸は上前腸骨棘骨と恥骨結合上縁を結ぶ線の中点に直交し,大腿骨頸の中央はその直交点より約7cm外側に位置する。軸位像の撮影は,大腿骨頸軸を水平にし,上前腸骨棘と恥骨結合上縁を結ぶ線と平行なX線中心線を基準線の中点から7cmの位置へ入射する。大腿骨頸軸は大腿骨を約20°内旋することによって水平位となる。

⚫️体位: 仰臥位。骨盤部が寝台と水平になるように調整し,検側下肢は伸展して,やや内旋する。非検側の股関節と膝関節はそれぞれ直角に屈曲する。
⚫️中心線:検側の鼠径線を股間部に延長した線上で,大腿部中央より約2cm前方を中心として,尾頭方向に斜入する。


ラウエンシュタインI法

股関節正面においては寛骨臼の前上部,および内側月状面と大腿骨頭との間隔は観察できるが,寛骨臼窩,下内方月状面の間隙は投影されない。そのために骨盤を45°傾斜する。この場合,大,小転子より下方の大腿骨側面像を得るが,大腿骨頸は短縮し,骨頭と大転子に重複するため,この部分の観察には適さない。

⚫️体位:側臥位。検側を下にして,骨盤部を45°傾斜させる。膝関節を軽く屈曲し,股関節は45°外転し大腿骨側部がカセッテ面に密着させる。非検側下肢は,立膝にして体位の安定をはかる。
⚫️中心線:上前腸骨棘と恥骨結合を結ぶ直線の中点から4cm足側の大腿骨頭を中心とし,カセッテ面に垂直に入射する。


ラウエンシュタインII法

大腿骨頸の正確な側面像(カセッテ面と大腿骨頸軸が平行)からは,大腿骨頸軸の変位や前捻角,寛骨臼と大腿骨頭との関係などが観察できる。大腿骨頸軸は大腿骨体軸との間に約130°の角度をもつため,大腿骨体軸をカセッテ面に対し50°外転位とし,股関節を90°屈曲することで大腿骨軸はカセッテ面に平行となる。

⚫️体位:仰臥位。股関節を90°屈曲し,カセッテ面とのなす角が50°となるように外転する。同時に膝を90°屈曲させて下腿を補助具に乗せる。
⚫️中心線:上前腸骨棘と恥骨結合上縁を結ぶ直線の中点を左右で結び,正中線との交点を中心として,垂直に入射する。