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STEP01 肩関節

正面

肩関節正面像では上腕骨頭と肩甲骨関節窩がつくる球関節腔と,肩峰下の間隙が広く観察できる。一般に肩甲骨関節窩は正中面に対し約30°前内方を向き,肩峰下面は水平より上方へ約20°の傾斜をもつ。このことから撮影体位が決定される。また肩関節のX線像は関節包の部分を含め,大,小結節,結節間溝がよく示現しなければならない。それには大結節が上腕骨頭の外側でなく,やや内側へ投影する体位,即ち肘関節でやや内旋し,手掌面を体側にあてる体位がよい。

⚫️体位:座位,あるいは立位とする。検側背面を受像面に密着させ,非検側を受像面から離す方向で,体軸回旋30°の斜位とする。手掌面は軽度内旋し,体側へつける。
⚫️中心線:上腕骨頭内側(烏口突起)を入射点として頭尾方向20°で斜入する。


中間位

肩関節中間位では鎖骨,肩峰,上腕骨の重なりが少なく描出され,肩鎖関節も観察できるが,肩甲骨関節窩は上腕骨頭と重複する。上腕骨頭の大結節は接線方向に,小結節は中央に投影される。

⚫️体位:座位,あるいは立位とする。検側背面を受像面に密着し,前額面は受像面に対して平行とし,体軸回旋を0°の正面とする。肩の力を抜いて上腕を下垂し,肘関節は伸展,手掌面を体側につける。
⚫️中心線:肩甲上腕関節(烏口突起2~3cm下方)に対し,垂直に入射する。


外旋位

肩関節外旋位では鎖骨,肩峰,上腕骨の重なりが少なく描出され,肩鎖関節も観察できるが,肩甲骨関節窩は上腕骨頭と重複する。上腕骨頭の大結節は外側接線方向に,小結節は上腕骨頭の中央部に投影される。

⚫️体位:座位,あるいは立位とする。検側背面を受像面に密着し,前額面は受像面に対して平行とし,体軸回旋を0°の正面とする。肩の力を抜いて上腕を下垂し,肘関節は伸展,手掌を前向きから外側に向けた最大外旋位とする。
⚫️中心線:肩甲上腕関節(烏口突起2~3cm下方)に対し,垂直に入射する。


内旋位

肩関節内旋位では鎖骨,肩峰,上腕骨の重なりが少なく描出され,肩鎖関節も観察できるが,肩甲骨関節窩は上腕骨頭と重複する。上腕骨頭の大結節は骨頭のほぼ中央に,小結節は体幹側に接線方向に投影される。
Hill-Sachs損傷や棘下筋腱・小円筋腱の石灰化の検出に有効である。

⚫️体位:座位,あるいは立位とする。検側背面を受像面に密着し,前額面は受像面に対して平行とし,体軸回旋を0°の正面とする。肩の力を抜いて上腕を下垂し,肘関節は伸展,手掌を後ろ向きから外側に向けた最大内旋位とする。
⚫️中心線:肩甲上腕関節(烏口突起2~3cm下方)に対し,垂直に入射する。


挙上位(立位)

肩甲骨が胸郭から外側上方に回転しながら移行し,肩甲骨関節面が上方を向く。関節窩は接線像になるため,上腕骨頭との間に関節腔を描出する。関節窩と上腕骨頭の位置関係が描出し,上腕骨頭の外側への変位を描出する。

⚫️体位:立位で前後方向撮影。受像面の中央に検側の上腕骨頭部を付け,上体の前額面は受像面に対して平行にする。上肢は自然下垂位から上体の前方に挙上して,最大挙上点で静止し撮影する。
⚫️中心線:中心線は腋窩の中点を貫き、受像面に垂直となる。


挙上位(仰臥位)

肩甲骨が胸郭から外側上方に回転しながら移行し,肩甲骨関節面が上方を向く。関節窩は接線像になるため,上腕骨頭との間に関節腔を描出する。関節窩と上腕骨頭の位置関係が描出し,上腕骨頭の外側への変位を描出する。

⚫️体位:仰臥位で前後方向撮影。受像面の中央に検側の上腕骨頭部を付け,上体の前額面は受像面に対して平行にする。上腕を150°外転,撮影台と上腕骨の角度が30°となるようにし,肘を90°屈曲させて撮影する。
⚫️中心線:腋窩に向けて,受像面に垂直に入射する。


軸位(仰臥位)

肩甲骨関節窩がほぼ接線となり,上腕骨頭と関節窩の関係が明瞭に観察できる。烏口突起水平部が鎖骨に直交して描出され,上腕骨頭に肩峰および鎖骨の一部が重複する。肩甲上腕関節関節裂隙が4~6mmで描出される。

⚫️体位:仰臥位。発泡スチロール板の上に寝て,頭部を非検側方向に側屈し,できるだけ体幹側の撮影領域を広く確保する。検側肩関節の頭側にカセッテを垂直に置く。上肢は60~90°外転,90°外旋,肘関節は90°屈曲させる。
⚫️中心線:前額面に平行で,正中線に対して足方外側から30~45°とし,肩鎖関節もしくは烏口突起の位置が射出点になるように腋窩に入射する。


軸位(座位)

上腕骨頭と肩甲骨関節窩を正面像の投影方向に対して直角方向で撮影する方法である。関節窩面は肩甲骨内側縁にほぼ平行であるから,X線中心線は肩甲骨内側縁に沿って平行に入射する。

⚫️体位:座位とする。上腕を45°外転,肘関節を90°屈曲し,前腕は回内位とする。受像器(カセッテ)を脇にかかえこむように体軸を検側に側屈し,できるだけ体幹側の撮影領域を広く確保する。
⚫️中心線:前額面に平行で,正中線に対して5~10°内側から外側へ,関節腔の中心へ向けて肩鎖関節もしくは烏口突起の位置に入射する。


Yビュー

肩甲骨関節窩と上腕骨頭の中心が重複し,肩峰・肩甲棘・棘上窩までの一辺と,肩甲骨上角・烏口突起からなる一辺,肩甲骨体部の三辺がY字状に投影される。また,鎖骨と上腕骨頭の間に肩峰下関節(第二肩関節)が広く描出される。上腕骨と肩甲骨体部は重複するが,肋骨とは分離する。

⚫️体位:座位,あるいは立位とする。検側肩前面を受像面に付け,非検側は離すように体軸を回旋する。上腕骨は力を抜いて下垂し,肘関節は伸展位とする。肩峰角と烏口突起を結ぶ線の中点と肩甲骨内側縁が受像面に対して垂直になるように調整する。
⚫️中心線:棘上窩が接線となる角度で,上腕骨頭を射出点とする。棘上窩は肩甲棘上縁と15°の角度を持つため,一般的に頭尾方向20°前後で入射する。


ストライカー

上腕骨頭後外側部が接線として外側部に描出する。Hill-Sachs損傷では,上腕骨頭後外側部の骨欠損(Postero-Lateral-notch)が認められる。

⚫️体位:仰臥位とする。検側肩部背面を受像面につけ,前額面を受像面と平行にした正面位とする。上腕骨は135°挙上し内外転は0°,肘関節を90°屈曲し,手掌面を頭頂部にあてるようにやや内旋位とする。
⚫️中心線:検側腋窩に対して受像面に垂直に入射する。